東海北陸国立病院薬剤師会
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会員施設だより

各薬剤科の様子を皆様にお伝えします

榊原病院 薬剤科紹介
2020/11/12 
榊原病院は、医療観察法病棟(18床)を有する精神科専門の医療機関です。当院は、伊勢自動車道の久居インターから車で約20分、清少納言の枕草子にもある有名な榊原温泉にほど近く、山々の自然に囲まれた閑静な温泉地の丘の中腹にあります。
 小規模な病院ですが、多機能であることを特徴としています。一般の精神科をはじめ、児童・思春期の心のケア、難治性統合失調症、徘徊や暴力など周辺症状が目立つような認知症、強度行動障害、医療観察法による処遇を受ける方など、様々な症例に対応しています。
 2019年6月には訪問看護ステーションを開設し、デイケアや短期入所サービスも行っており、在宅支援にも積極的に取り組んでいます。また、災害時の対応として災害派遣精神医療チーム(DPAT)活動も行っており、日々研鑽を積んで有事に備えています。
       
 午前中は調剤業務がメインになりますが、午後からは各種委員会活動、病棟服薬指導業務、CPMS(Clozaril Patient Monitoring Service)を利用したクロザピンチーム医療への参画、統合失調症やアルコール依存症の治療プログラムによる患者(家族)教育としての薬剤講義、病棟チーム医療カンファレンスへの参加、各種研修会の企画、三重県難治性精神疾患地域連携ネットワーク事業活動への参加など、少人数の職場ながら幅広く業務を行っています。
特に、クロザピンを使用した難治性統合失調症への薬物治療には力を注いでおり、クロザピン治療専用病棟をオープンして、平成26年10月のクロザピン治療開始より5年半を経て、導入症例が今年の春で100例を超え、記念品の「津 高虎 どらやき」がお祝いとして全職員に配られました。
個性豊かな看護師さんからの問い合せには驚かされることもありますが、他職種との距離が近いことはとても魅力的で日々勉強になります。時々対応に苦慮することもありますが、患者さんからの「ありがとう」の笑顔は日々の活力になっています。毎日が慌ただしく過ぎていきますが、和気あいあいとした楽しい職場です。
       
私が薬剤師になった平成2年頃、精神科は敷居が高く受診への抵抗感や偏見が強い時代でした。それから30年が経ち、精神疾患への偏見は減り、精神医療の敷居は随分低くなったと感じています。「ワーク・ライフ・バランス」が叫ばれる昨今、うつ病は恥ずかしい病気から、こころの風邪と呼ばれることも多くなり、積極的に受診されるようになりました。精神分裂病は統合失調症と名称が変わり、副作用の少ない治療薬も増えてきました。
厚生労働省は2004年に「精神保健医療福祉の改革ビジョン」を掲げ、「入院医療中心から地域生活中心へ」という方策を推し進めることになり、精神医療は患者を社会から隔離することから、地域移行と社会復帰を目指す方向に変化しました。薬物療法では、病棟内適応を目的とした旧来の鎮静中心の多剤大量投与から、心理社会療法を支援する社会適応を目指した単剤療法へと向かいつつあります。統合失調症の一部には通常薬剤が効かない難治性症例があり、当院では最後の切り札としてクロザピンを投与することにより状態が改善し、長期入院を脱して外来通院に移行できた劇的な症例を経験することがあります。
今年2月には、新型コロナウイルス感染症で問題となったクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の乗客下船後の隔離施設において、当院の災害派遣精神医療チーム(DPAT)が支援活動を行いました。災害派遣医療チーム(DMAT)活動はよく知られていますが、感染被害者に対するDPAT活動は想定外の初めての経験で、感染リスクと行動制限から高まる乗客のストレスに対して何ができるのか?精神医療の必要性を感じながら手探りの状態で脇役的な活動が中心であったと院内報告がありました。ウィズコロナに移行しつつある現在、今後はウイルス感染症流行下で発生する地震や水害等の自然災害、複合災害と呼ばれるさらに難しい状況に対してどのような対応が可能か、今回の経験を振り返り、検討を重ね日々研鑽を積んで有事に備えることが重要だと考えます。
コロナ禍による行動制限から在宅時間が増え、DVやアルコール依存の増加、パチンコ店のギャンブル依存問題など、新たに精神医療が必要とされる機会が増加しています。医療業界は在宅勤務には向かない現場ではありますが、「3密」を避けるWeb環境による打合わせや会議が増え、学会や研修会への参加に伴う出張、移動機会の減少が期待されます。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う社会情勢の変化は、精神医療を取り巻く環境のみならず、社会の仕組みや生活様式にまで大きな影響を及ぼし、新たな課題を浮き彫りにしています。

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