東海北陸国立病院薬剤師会
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会員施設だより

各薬剤科の様子を皆様にお伝えします

駿河療養所 薬剤科紹介
2021/03/31 
当所は静岡県の東部、御殿場市にあります。箱根山の尾根を芦ノ湖とはさんだ中腹に位置し、最寄り駅は裾野市JR東海御殿場線の岩波駅となり、車で10分位の距離にあります。富士山は当たり前のようにそこにあり、駿河湾を望めるポイントもあります。
 敷地面積は東京ドーム7.8個分と広く、また高低差があるところに各施設が建てられているため、所内移動専用のナンバープレートのない車やバイクも所有しています。主な施設は事務本館、治療棟、病棟、そして各居室が集まったセンターが4棟あります。
 そういえば療養所のロゴマークは、富士山と駿河湾と療養所の建物の並びを表したもので応募したところ、採用されました。
 東海北陸ブロックでは唯一のハンセン療養所ですが、国内には13施設あります。当所は他施設と多少、意味合いが違い、戦時中に戦地で罹患した傷痍軍人のらい療養施設として構想されました。実情は酷いもので、すでにあった他の隔離施設から健康度の高い傷痍軍人を募集し、自給自足で物資も少ない中、建築させたそうです。昭和20年に開所となり、ピークでは471名もの入所者がいましたが、令和3年3月現在、46名の方が生活されています。
 ハンセン療養所の目的は、『入所者の尊厳を重んじ安心して療養生活を送ることができる環境の提供』です。ですから他の病院との違いが多くあります。
 敷地内には病院施設の他に居住区としての施設も多くあります。一般舎、納骨堂、鐘撞堂、教会、礼拝堂、神社、自治会館、大浴場、盲人会館など。特に介護度が高い入所者用のセンターを不自由者棟と呼んだりしています。
 地域交流も目的の一つで納涼祭には敷地内から3000発の打ち上げ花火を上げるので、近隣の方々が700人ほどみえましたし、桜の季節には所内の桜公園目当てにバスが訪れることもありましたが、COVID-19のため、ここ数年は控えることになりそうです。
医療的なことでは、基本、保険診療を行っていません。よって一般の会計係もなく、職員が受診した場合、福祉課という入所者の生活面を担当する部署がカルテを扱っている関係からか算定しています。
所内での治療ですが、ハンセン病の後遺症に関することと高齢に伴うことがほとんどです。末梢の血管、神経等にダメージを受けている方が多いので、糖尿病やリウマチを想像されるといいかもしれません。他に瞼の開閉や皮膚知感も鈍くなるので、兎眼や知らない間の裂傷や火傷もみられます。傷の治りも遅いためこまめな処置も必要となります。
また穢れの対象とされてきたことや入所者同士で傷の処置を行ってきた過去があるため、診療側の治療提案が受け入れられなかったりスタンダード・プリコーションが徹底できなかったりと根気よく説明が必要となる場面もあります。
 ハンセン病に関しては戦後すでに遺伝と関係なく感染力が非常に弱い感染症であることが判明しており、治療方法も確立していました。しかし日本では世界的動向と逆行し「癩予防法」を踏襲した「らい予防法」を1953年(昭和28年)に公布します。強制隔離に優生保護も含んだ、かなり人権に反した内容でした。これが廃止されたのは1996年(平成8年)です。
 人権の回復には予算も人員も使って対応していますが、医学的根拠に反して40年以上も続けてしまった誤った政策に対しては、そうなってしまった検証や反省、改善策の模索などは、ほとんど行われていません。また繰り返す危険性は残されたままです。システム化されていない場合、個々の知識や経験に頼らざるを得ません。一般の方々へのハンセン病の知識、問題を広めていくことも当所の目的の一つです。その重要さを新型コロナ関係で自死を選んだり転居された方がいたりといったニュースを目にして強く思った次第です。

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