国立長寿医療研究センターは、愛知県西部、知多半島の北端に位置する大府市にあり、広大な公園を有する「あいち健康の森」に隣接しています。風向きによっては牛のにおいもしますが、のどかでとても環境のいい場所です。アクセスは名古屋駅からJR快速で15分程で大府駅に着きますが、そこから病院までのバスが1時間に1〜2本しかありません。そのため、上り坂を健康増進もかねて自転車(10分)を利用したり、30分かけて徒歩で通勤している職員もいます。周辺には飲食店やコンビニもなく、門前に調剤薬局もないため院外処方せん(発行率95%)は面で取り扱われています。
当センターの沿革は昭和41年、旧国立愛知病院と旧国立療養所大府荘が国立療養所中部病院に組織統合され、昭和62年の昭和天皇御長寿御在位60年記念事業「長寿科学研究センター(仮称)基本構想」に基づき、平成7年に国立療養所中部病院長寿医療研究センターが開所されことに始まります。平成16年には国立高度専門医療センターの一つとして国立長寿医療研究センターとなり、平成22年に独立行政法人化されています。平成27年には国立研究開発法人として新たにスタートを切り、理念である「高齢者の心と体の自立促進と健康長寿社会の構築」に貢献するための研究、開発がさらに求められることになりました。現在の病床数は321床、標榜診療科20、平成26年度の1日平均患者数は入院254名、外来582名でした。職員数は研究所職員も含めると921名(平成27年度)となっています。
薬剤部は平成27年2月の段階で欠員1名のため13名の薬剤師(内1名は治験・治験臨床研究センター配属)と1名の薬剤助手で業務を行っています。勤務態勢ですが、平日はシフト制で1名が19時15分まで勤務、土日休日は日直、夜間はオンコールとなっています。平成24年8月からは病棟薬剤業務実施加算の請求を始め、薬剤師が常駐している2病棟以外の持参薬チェックを薬剤部内で行っています。
長寿に関わる病院なので患者さんは高齢者が多く、一般的な治療に加えて、認知症、フレイル、終末期医療などがキーワードとなっています。世界最大規模の「もの忘れセンター」では、最先端の機器による認知症診断が行われ、家族教室で生活指導が行われています。「もの忘れセンター薬剤師外来」も行われており、認知症と診断が確定し、抗認知症薬の処方が出た直後に薬剤師が外来に出向き、患者さん、家族と面談して薬の説明や管理方法についてアドバイスしています。
チーム医療としてはNST、ICTなどに加えてDST(Dementia Support Team:認知症サポートチーム)、EOLケアチーム(END-Of-Life:疼痛緩和及び、治療選択における患者さん・家族の意志決定を支援するためのチーム)に薬剤師が参加しているのが特徴で、最近立ち上げられたフレイル外来にも薬剤師の参加が求められています。
研究分野では、ポリファーマシーの解消について、日本老年医学会の『高齢者の安全な薬物療法GL2015』に基づいた検討を行い、高齢者の医薬品適正使用に貢献したいと考えています。2剤以上を削減することができれば、薬剤総合評価調整管理料の請求が可能となり、病院の収益にもつながるものと思います。国立研究開発法人としての情報発信も我々のミッションとして求められており、認知症治療への参加、ポリファーマシー解消、適正な褥瘡治療方法の普及などをテーマに情報発信を行っていく予定でいます。
最近では2025年問題が取り上げられ、テレビ番組や雑誌などでも当センターの医師がよく登場しています。この間、なにげなくテレビをつけたらNHKの「クローズアップ現代」に副院長が出ていました。タケシの健康番組でも当センターの認知症治療専門医が登場しています。学会発表、論文報告以外にも、これからは一般の皆様にも国立研究開発法人の薬剤部の活動を理解していただけるような情報発信をしていきたいと思っています。